はこだて工芸舎(旧梅津商店リノベーション)

はこだて工芸舎1
はこだて工芸舎2
はこだて工芸舎3
はこだて工芸舎4
はこだて工芸舎5


函館の歴史的街並が色濃く残る「西部地区」の玄関口に位置するこの建築は、昭和9年の最後の函館大火の後、それまでの「木骨鉄筋コンクリート造」から木造の酒問屋「梅津商店」として翌年には再建された。築80年を迎えたこの建築を、実に30年ぶりに「はこだて工芸舎」として蘇らせるプロジェクトである。

「次の世代へとこの建築を継承したい」それが施主の希望であり、私達も大きくそれに共感する事からこの計画はスタートしている。 先行して行った実測調査で建築の創建当時の姿を把握し、可能な限り「オリジナルの状態に戻す」という方針でデザインに挑んだ。

3間半(6,370mm)の大スパンを支え続けた2本の大梁に、鉄骨の補強柱を据付け、荷重を分散させる措置を講じた。柱はこの建築の雰囲気になじむよう、また陶芸家である施主の作品にも合うよう、建築的なスケールではない非常に繊細なものになるように心がけている。柱の頭頂部で四つ又にねじりながら分岐させ、格天井を切断しない工夫を施した。

100年後、この街がどうあるべきか。今仕事は私達に「函館の未来像(ビジョン)」を考える上でのまたとないきっかけとなってくれたように思う。先人達が残してくれた恩恵を受けるのは、私達の世代で終りではない。子や孫やその先の世代まで良質な都市空間を継承し、まだ見ぬ「未来の市民」に誇れる街づくりの視点がきっとあるはずだ。

所在地 : 北海道函館市
設計監理 : 髙田傑建築都市研究室
設計協力 : 富樫雅行建築設計事務所
構造監修 : 笹谷真通(ARUP Japan)
総合プロデュース : 株式会社前側建設
施工 : 寺井組
竣工 : 2014.2
     
(Link :  はこだて工芸舎